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うみねこ通信 No.308 令和7年2月号

親知らずのハナシ

歯科口腔外科医師 松村 章弘

みなさん、「親知らず」の語源はご存知でしょうか。諸説ありますが、親元を離れる18歳から20歳頃に生えてくることが多く、「親が知らぬ間に生える」ことから呼ばれはじめたという説が私のお気に入りです。また、専門用語では智歯とも呼ばれ、英訳するとWisdom(賢い、分別のある)tooth(歯)。すなわち「物の分別が付くようになってから生えてくる歯」というように、英語から遡ってみるのも面白いです。
親知らずとは、前から数えて8番目に位置する歯で、上下左右にそれぞれ1本ずつ計4本生えるとされています。しかしながら、歯肉に完全に埋まっていて気づかない場合や元々4本揃っていない場合など個人差があります。起源を遡れば、人類の直系のルーツと考えられているクロマニヨン人の時代から親知らずは生えていたとされています。当時はマンモスなど大型動物の狩猟を主とした硬い食事が多く、咀嚼回数や食事時間も現代の4倍ほどかかっていたと言われており、それにあわせて顎も大きく発達し、親知らずは他の歯と同様に真っ直ぐ生えていました。ところが、農耕や加工食品の発達に伴い食事が軟食に変化したことによって、現代人の顎は小さくなり(小顔化)、親知らずが顎に入りきらないという現象が起こりはじめたのです。歯科医院でレントゲンを撮影すると、親知らずが横向きに生えていたり顎骨に埋まっているというのがその典型です。
親知らずの抜歯と聞くと、民話の「こぶとりじいさん」のように頬が腫れて大変な思いをすると想像される方も多いと思います。抜くのも痛そうで怖いし、できれば抜かずに過ごしたい、と考えるのは皆さん同じでしょう。では、親知らずは本当に抜かなければいけないのでしょうか。少しずるいですが、答えは「人それぞれ」と濁さざるを得ません。人によって生え方や埋まり方は千差万別であり、それに伴う症状によって抜歯が必要かどうかは変わってきます。そこで、まずは親知らずが及ぼす影響や症状を考えてみましょう。

①歯茎が腫れる(智歯周囲炎)
親知らずと隣の歯との間の歯周ポケットに食べカスが停滞し細菌感染を起こします。
②虫歯になる(齲蝕)
親知らず自体はもちろん、隣の歯を虫歯にしてしまうことも多いです。
③歯並びに影響を与える(歯列不正)
親知らずが隣の歯を押すことによって歯並びが乱れる場合があると言われています。
以上の代表的な症状を基本として、私たち歯科医師には親知らずの抜歯を勧める基準があります。
  • ・深い虫歯になっている
  • ・腫れを繰り返している
  • ・隣の歯に影響を及ぼしている
  • ・矯正歯科治療の予定がある
  • ・嚢胞(袋状の病変)を形成している
上記項目にひとつでも当てはまる方は抜歯が必要な状態と考えますが、逆に抜かなくてもいいと判断する基準もあります。
  • ・真っ直ぐ生えていて上下の歯がかみ合っている
  • ・骨に完全に埋まっていて症状が無い
いずれも歯科医院で専用の器具やレントゲンで確認する必要があるので、ご自身の親知らずが抜歯を要する状態なのか気になる方は、お近くの歯科医院で一度ご相談されることをお勧めします。
今回は、私たち口腔外科医にとって最も症例数が多く、普段相談される機会も多い「親知らず」のお話でした。この記事をきっかけに、自分の親知らずってどうなんだろうと少しでも関心を持って、歯科医院を受診するモチベーションになってもらえたらと思います。
 

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