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うみねこ通信 No.113 平成20年11月号

麻酔と肥満

麻酔科部長  田口 さゆり

まず、肥満とは何でしょうか?肥満とは、体脂肪が体内に過剰に蓄積した状態を言います。したがってボディービルダーの様に、筋肉トレーニングをした結果、標準体重を上回っていても、決して肥満とは言いません。ですから、肥満の判定には体脂肪率を用いるのが最良なのですが、誰でも簡単に量れるわけではありません。そこで肥満を評価するために、もっともわかりやすい指標として、Body Mass Index(BMI)が用いられています。これは体重(kg)を身長(M)で二回割った数値のことです。標準体重とされるのが、BMI22であり、 BMI25以上を肥満とします。このBMIの値が30以上の肥満は、麻酔や術後に重大な影響が出ると言われています。
 身長150cm → 体重約68kg
 身長160cm → 体重約77kg
 身長170cm → 体重約87kg
 身長180cm → 体重約97kg
が、BMI30に相当します。

では、ここからが本題です。皆さんは「麻酔」と「肥満」にどのような関係(影響)があると思いますか?

  • ① 点滴が難しい:脂肪に埋もれた静脈を探すのは一苦労です。
  • ② 血圧が測りにくい:動脈も当然探しにくいです。身体が大きい分、酸素消費量も増えるので、心臓は送り出す血液量を増やし、結果的に血圧は上昇に転じるのですが、駆血帯で測る方法では血圧を過小評価することがあります。
  • ③ 気管挿管が難しい:全身麻酔中は、人工呼吸を行うために気管内に透明なチューブを挿入(気管挿管)しますが、その際に使用する喉頭鏡と言う器具が張り出した胸にぶつかってしまい、操作を困難にします。また、チューブを挿入する前はマスクで呼吸をさせるのですが、容易に舌が根元の方に落ち込んでしまい、マスクでの呼吸も困難になることがあります。
  • ③ 気管挿管が難しい:全身麻酔中は、人工呼吸を行うために気管内に透明なチューブを挿入(気管挿管)しますが、その際に使用する喉頭鏡と言う器具が張り出した胸にぶつかってしまい、操作を困難にします。また、チューブを挿入する前はマスクで呼吸をさせるのですが、容易に舌が根元の方に落ち込んでしまい、マスクでの呼吸も困難になることがあります。
  • ④ 脊椎麻酔・硬膜外麻酔も難しい:いわゆる「下半身の麻酔」の事です。背骨と背骨の間から針を刺して行うので、背骨を触れやすくするため、エビの様に丸まってもらう必要がありますが、お腹の肉が邪魔をして良い体位がとれません。必然、刺される回数も多くなり、時間もかかります。
  • ⑤ 肺合併症が起きやすい:肥満の人は、胸や腹に重石をのせているのと同じ状態にあります。自発呼吸でも、全身麻酔で人工呼吸を行っている最中でも、肺はつぶれやすく、ふくらみにくい状態にあります。そのため、肺での呼吸がうまくいかなくなり、容易に低酸素状態を引き起こします。
  • ⑥ 手術自体も難しくなり、長時間になる:説明はいりませんね。
  • ⑦ 手術終了後の移動が困難:手術室スタッフ一人で、腰に無理なく担当できる重量は約10kgです。一人の患者さんに関われる人数には限りがあります。
など、いいことは一つもありません。密かに「肥満は安全な手術の敵!」と言われる所以です。

したがって、長時間に及ぶ手術、うつぶせの手術、命に別状のない手術などの場合、安全のために手術を延期してもらい、減量してから手術予定を組んで戴く事もありますので、ご協力をお願い致します。そうならない様に、普段から健康な身体作りを心がけたいものですね。

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