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栄養管理室長 田村 英子
よく「行列の出来る店」と題して、ラーメン店が取り上げられますが、蕎麦屋が取り上げられることはあまりないようです。ラーメンスープのパンチが近代人の味覚にマッチングしたのでしょう。
蕎麦の歴史は、ラーメンの歴史に比べると遥かに古く、わが国でのそばの栽培は5世紀中ごろと言われています。初めて蕎麦の記述は、「慈性日記(1614~1643)」に登場します。また、そば打ちの歴史は新しく、大衆食として普及したのは江戸時代中期と言われていますが、その起源についてはいまだ不明な点が多いようです。
福島県を旅すると、ラーメン店に負けないくらい蕎麦屋も多く、行列を作る店もあります。店に入ると、幼児から大人まで蕎麦を食べている。こうした風景は、八戸ではあまり見られません。食べてみると店により味が異なりそれぞれの蕎麦屋が、そば粉と水に拘りを持っているようです。たかが「そば粉と水」を混ぜるだけですが、蕎麦の奥深さを感じます。
蕎麦は、中国の雲南省や四川省の山岳地帯が発祥の地と言われ、日本に限らず世界各国で食べられています。例えば、ロシアでは、そば粥をカーシャと言い、塩味やミルク・バターを混ぜたものに、キャビアやニシンを添えて食べるようです。 蕎麦の中に韃靼そばがあります、別名「苦そば」とも言われ、食べると苦みを感じるのが特徴です。韃靼そばの名前の由来は、モンゴル系の一部族のタタール人の名称で、中国語の読み方で韃靼(ダッタン)と読むそうです。
近年、韃靼そばと健康が注目されるようになったのは、ポリフェノールの一種のルチンが普通のそばの80倍から100倍入っていると言われているからです。現実的に中国四川省に住む彝族やヒマラヤ高地に住む民族は韃靼そばを主食としていて、心疾患、脳血管障害などの生活習慣病の発生率が極めて少ないことで知られています。
ルチンは、フラボノイド類に属する化学成分で、ポリフェノールの一種です。ポリフェノールには、活性酸素を抑える強い抗酸化作用があります。他のポリフェノールには、大豆のイソフラボン、黒豆やブルーベリーのアントシアニン、緑茶のカテキンなどがあます。 ルチンの健康効果として、毛細血管の透過性を適度に調節し、血管がもろくなるのを防いでくれると言われています。体内に活性酸素が過剰に発生すると血管壁が傷つき、血栓ができやすくなります。ルチンは、この活性酸素の働きを防ぎ、血流をよくする働きがあります。また、ルチンの作用で毛細血管が強くなり、「血液がサラサラ」に保たれると、血管にかかる負担が軽くなり、脳梗塞、脳出血などの脳血管障害を未然に防ぐ効果があると言われています。
韃靼そばには、普通のそばと異なり、ケルセチンと言われるルチンを分解する酵素が含まれています。ルチンがケルセチンに変わると黄色が濃くなり苦味も増します。ケルセチンもポリフェノールの一種でルチンのような健康効果をもたらすと考えられています。
韃靼そばにかぎらずルチンを摂取するには、蕎麦茶としてとるのが手軽な方法です。お粥にしたり、御飯に少し入れて炊き上げる方法や、蕎麦を炊き、茸や人参などとあんかけにするなど毎日の食事からもとれます。ルチンのとり過ぎによる副作用はないようですが、麺で食べるときは、つゆの塩分に注意が必要です。