1.過活動膀胱とは
過活動膀胱とは尿意切迫感を主症状とし、通常は頻尿や夜間頻尿を、時には切迫性尿失禁を伴う症状症候群であると定義されるものです。簡単に言うと「おしっこに我慢がきかない」状態であり、おしっこがしたいと感じたら急いでトイレまで行かないと漏らしそうになる、もしくは漏らしてしまうという症状が、原因を問わず認められる状態を言います。40歳以上の男女を対象とした調査では、実に12.4%で過活動膀胱の症状を有していることが示されています。
2.過活動膀胱の原因
過活動膀胱の原因は、神経疾患に起因する神経因性と、明らかな神経疾患が見いだせない非神経因性とに大別されます。神経因性では脳血管障害、パーキンソン病、認知症、脊髄損傷、脊柱管狭窄症などが原因となります。一方、非神経因性では前立腺肥大症などの下部尿路閉塞、中枢神経の加齢などが原因となります。
3.過活動膀胱の治療
- A.行動療法
- 行動療法とは、簡単に言うと日常生活等の改善をすることで症状の改善を図ることをいいます。過活動膀胱では過剰な飲水や利尿作用のある飲料の摂取が症状の悪化につながるため、1回排尿量や1日尿量を記録し、排尿パターンを把握し、また飲料摂取の状態についても把握する必要があります。このため24時間の間の排尿時間、1回排尿量、水分摂取時間、水分摂取量などを排尿記録として数日間記録して頂くことがあります。これによりさまざまな問題点が分かることがあります。
- 健康維持のためには飲水励行が必要と考え、必要以上に飲水している方もおり、飲水量や水分を多く含む食品、利尿効果を高める食品(アルコール、カフェインを含む飲料;コーヒー、お茶など、カリウムを多く含む食品;果物、野菜など)をコントロールすることにより症状が改善することもあります。刺激物(コショウ、唐辛子など)も症状を悪化させるきっかけとなることがあります。成人の1日尿量は約1000~1500mlが目安になります。
- 膀胱容量が小さく、尿意切迫感を警戒して早めにトイレへ行っている場合もあります。このような場合には、尿意を感じてもすぐにトイレへ行かず、10分~15分ほど我慢してからトイレへ行くようにし、徐々に時間を延長し、膀胱を訓練することが有効なこともあります。
- 夜間の尿量が多い場合には、夕食後の水分摂取を控えることが有効です。睡眠障害により夜間に強く尿意切迫感を感じる場合には、夕方の散歩など軽い運動をすることで、不眠を解消することにより効果があることがあります。
- 骨盤底筋運動を行い尿道周囲の括約筋を鍛えることも有効なことがあります。
- B.薬物療法
- 過活動膀胱に使用される薬剤としては、膀胱の収縮を抑制する抗コリン薬が最も多く使われます。また三環系抗うつ薬はおねしょに効果のある薬で、過活動膀胱に対して使用されることがあります。前立腺肥大症を合併している場合には、α-ブロッカーという薬を併用します。
4.おわりに
過活動膀胱は、単一の治療では満足のいく結果が得られない場合が少なくありません。完全にコントロールできない尿失禁も少なからず認められますが、個々に応じて日常生活を改善し、これらを薬物療法と上手に組み合わせることで、治療効果を高めることが可能となります。
尿意切迫感や頻尿といった症状が気になる方は、ご相談ください。