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うみねこ通信 No.154 平成24年4月号

胆石症

第二消化器内科部長  西谷大輔

肝臓から分泌された胆汁(たんじゅう)は、胆管と呼ばれる管を通って十二指腸へ運ばれます。胆嚢(たんのう)は、この途中についている袋状の臓器で、胆汁を一時的に溜めて濃縮しておき、口から食べた食物が十二指腸へ送られたとき、これを感知して収縮し胆汁を腸へ分泌します。胆汁は、脂肪 の消化を助けています。胆石症とは、この胆汁が存在している胆嚢や胆管にできる石を総称していい、それぞれ部位により、胆嚢結石症、総胆管結石症、肝内(胆管)結石症と呼ばれます。

 実は胆石があっても症状のない人も多く、健診やドックなどで偶然発見されたり、胆石を持っていることも知らずに一生を過ごす方もいます。胆嚢結石の典型的な症状は、夜半から明け方にかけて起こる、強い上腹部の痛みです。痛みの部位は、心窩(しんか)部(みぞおち部分)から、胆嚢が存在する右季肋部(みぞおち部分より右側の肋骨の下のあたり)です。結石が胆嚢の出口に嵌頓(かんとん:はまりこんで動かない状態)することで起こります。食事によって胆嚢は収縮しますが、結石の嵌頓により胆汁が胆嚢から出られない状況になります。それでも胆嚢は縮もうとしてけいれんに似た痛みが起こるわけです。脂っこい食事(天ぷらやとんかつなど)で胆嚢はより強く収縮しますが、夕食にこのような食事をとることが多いため、夜間の発作が典型的となります。食物が消化されて十二指腸から小腸へ移動すると胆嚢が弛緩(しかん)して嵌頓がはずれ、明け方頃には自然に痛みがとれてきます。もちろん、昼食に脂っこい食事をとれば日中でも症状が出ます。胆管結 石も、普段は無症状です。肝内にある場合には、腹部や肩の痛みに加え、細菌感染があれば発熱がみられます。総胆管結石では、結石が総胆管末端に嵌頓することで症状がでます。胆管の胆汁流出が障害されることで上記の痛みの他、発熱、黄疸(おうだん)や褐色尿がみられます。さらに重症例では胆管全体が化膿してしまう急性胆管炎という状態が起こり、悪寒戦慄、ショックなどを伴うことがあり、命取りともなりかねません。

 胆石症の診断は、超音波検査(エコー)、CT、MRIを用いた胆管膵管撮影(MRCP )を中心とした画像検査や、血液検査(炎症反応や肝機能障害の有無など)で行います。高度の肥満(特にエコーで見えづらいんです)でなければ100%に近い診断が得られます。

 標準的な治療は、①手術、②体外衝撃波胆石破砕療法(ESWL )、③結石溶解療法、④内視鏡的総胆管結石除去術です。①は最も確実で短期間で治療が完了するため、一番多く行われています。特に腹腔鏡下胆嚢摘出術(お腹に小さい穴を3、4カ所開けて、ここからお腹の中をのぞくカメラや手術器具を挿入して胆嚢を摘出する方法)は、お腹につく傷が小さいため術後の痛みが軽く、それだけ術後の回復が早く、入院期間も短くてすみます。②と③は一部の種類の小さな結石にしか効果がない事や、確実性に欠ける事、再発率が高い事からあまり行われていません。④は総胆管結石に対して、十二指腸から総胆管へアプローチして結石を除去する内視鏡治療です。

 同じ胆石症でも症状のある方には上記の治療を積極的にお勧めします。ただ、全く無症状の胆石であれば、将来痛みが出てくるのは4・5割ほどですので、痛みが出た時点で治療を考えれば十分です。ただし、その間はほったらかしにするのは危険です。胆嚢がんの発生に注意すべきで、定期的な検査 (エコーなど)を受け、胆嚢壁に変化がないことを確認する必要があります。 脂っこい食事は発作の原因となるだけではなく、長い目で見ると肥満(エコーでの検査が見えにくくなります)の原因にもなりますから、注意が必要です。

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