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うみねこ通信 No.14 平成12年8月号

血管造影って何?

第二放射線科部長  伊神 勲

一般の人にとっては直接受診することの少なかった放射線科ですが、最近はCT(コンピュ-タ断層撮影法)MRI(磁気共鳴画像診断法)シンチグラム(放射性同位元素を使った検査)等で受信される方も多くなりました。。放射線科は、その名の通り放射線を使った検査と治療を主に診療しています。この検査の中に血管造影があります。

血管造影は、文字通り体の中の血管のみを造影(写真に写す)し、病気の状態を診断する検査です。血管には動脈、静脈がありますが、目的とする血管に直接針を穿刺したり、または細い管(カテ-テル)を挿入し、造影剤という特殊な薬剤を注入して検査が行われます。針の穿刺血管は、動脈では頸動脈、腋窩動脈、肘動脈、手首の橈骨動脈、大腿動脈等が利用され、静脈では同様に診たい部位近くの静脈から造影剤を直接注入します。最近では、MRIやCTで血流の情報を基にコンピュ-タで処理し、血管だけの三次元画像を構成して行う血管造影もあります。

医学の発達において、病気、病態の解明がもっとも進んだのは、1895年11月8日のレントゲン博士によるX線の発見以後です。X線によりそれまでほとんど解らなかった患者さんの体内の状態が解明される様になりました。X線の発見後直ぐに屍体の手の血管に水銀を注入し、手の血管造影が行われました。しかし、実際の診療の上では1926年のポルトガル学派、モニッツ博士の脳血管造影まで待たなければなりませんでした。即ち、生体に安全な造影剤の開発が必要だったのです。そして、1929年同じくポルトガル学派のドス・サントス博士の腹部大動脈造影が報告されました。ドス・サントス博士は、腰から直接針を腹部大動脈に穿刺する方法で行いました。このため、血管造影は非常に高度な技術と経験を必要としました。戦後しばらくの間、本邦でもこのドス・サントス法が行われていました。1953年スエ-デンのセルディンガ-博士が、安全に大腿動脈からカテ-テルを挿入する方法を考案し、血管造影が世界中に飛躍的に普及しました。こうして、これらの偉大な先達のおかげで、現在体のあらゆる部位の血管造影が可能となっています。

現在、死亡原因のトップは悪性腫瘍(癌)で、腫瘍の状態や広がりを見るために、超音波検査、CT、MRI検査等が行なわれますが、血管造影の重要性は変わりません。悪性腫瘍であれば、血管造影の後に抗癌剤を注入することがあり、抗癌剤を飲んだり、点滴する全身投与よりも非常に効果が高いことがわかってきました(動脈化学療法)。また、一部の悪性腫瘍では、癌に行く血管を塞栓(血流を途絶)すると腫瘍の大部分が死滅することもあります(動脈塞栓術)。また、各種道具の発達により、動脈硬化などで血管が細くなったり閉塞した場合、動脈を風船で広げる治療が可能となってきました(血管形成術)。このように最近では、血管造影を病気の治療に応用することが盛んに行われ、外科手術をしなくても済んだり、手術ができない患者さんにも治療が可能になったりしています。

現在、血管造影は臓器により専門化され、心臓は循環器内科、心臓外科、小児科などで、脳は脳外科、その他の部位は一般的に放射線科で行います。特にカテ-テルやカテ-テルを送り込むガイドワイヤ-(先端が柔らかい針金)の細径化、血管を拡張させる風船付きカテ-テルの開発により、心筋梗塞の予防や治療、脳動脈瘤や血管奇形の塞栓治療等に活躍しています。古い映画で「ミクロの決死隊」と言うのがありましたが、カテ-テルも先端が径0.4mmとなり、専門の血管造影医は、カテ-テルの先端に目と触覚を持ち、体の隅々まで至る所にミクロの決死隊よろしく到達し、血管内治療を行っています。

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