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うみねこ通信 No.43 平成15年1月号

「みつくち」のはなし

歯科口腔外科部長  中山 勝憲

「口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)」という病気をご存知でしょうか?世間一般には「みつくち」「兎唇(としん)」などと呼ばれ、唇やはぐき、さらには口蓋(南部弁で言うあげた)・口蓋垂(のどちんこ)まで割れて生まれてくる先天奇形で、生まれながらにして顔の変形・飲めない・食えない・しゃべれないを合併しており赤ちゃんにとっては人生を左右する重要な病気です。

この疾患は人種によって発症率に差があることが分かっており、黄色人種、黒人、白人の順に発症率が高く、世界中でも特に中国や日本を始めとするアジアに患者が多いことが分かっています。日本でも毎年400~500人に1人の割合で出生し、国内では心臓奇形の次に多い奇形として認識されています。青森県における年間出生数が12000人前後ということを考えると、毎年約30人がこの病気を持って生まれてきていることが推測されます。

口唇口蓋裂には顔面や口腔内の割れ方によって様々なバリエーションがあり、唇裂・唇顎裂・唇顎口蓋裂・口蓋裂・口蓋垂裂・粘膜下口蓋裂などに分類されています。これはその割れ方の程度、範囲さらには皮膚粘膜・筋肉の発育不全の状態などにより顔面変形や言語障害など後遺症の重みに差が出てくるため、その状態にあった治療法を選択していかなくてはならない(数十種類の治療法があります)ことが近年わかってきました。この疾患は成長が止まる20歳頃まで根気強く治療を続けなくてはならないためその治療法について年代別にご紹介しましょう。

1)哺乳指導 出生直後お乳を飲めない赤ん坊にはホッツ床と言われる入れ歯状の装置を作成し口と鼻を境する事により自力で哺乳できるよう指導を行います。これにより哺乳の改善だけでなく、健常児に近い顔面発育を誘導できることが分かってきています。
2)口唇裂手術 生後3~6ヶ月時に唇部分の閉鎖手術を行います。これは顔の見た目を改善する手術で、手術方法・手術器具の改良によりかなり綺麗な唇鼻形態を作ることが可能となってきました。
3)口蓋裂手術 生後1歳半頃に口蓋部分の閉鎖手術を行います。子供は約2歳頃から言葉の数が急激に増加します。よってこの時期までに口と鼻の破裂部を閉鎖することにより、言語障害を残さないようにする大切な手術となります。
4)言語治療 一般的に4歳頃より言語障害が残っている子供を対象に言葉の訓練を行います。口蓋裂手術が成功してもノドの筋肉の発育不全などにより約3割のお子さんには言語障害が残ると言われています。しかし、今はスピーチエイド等の発音補助器械の作成も可能となり、必ずしもノドの再手術が必要というわけではありません。
5) 骨移植手術 6~9歳の時期に歯ぐきの骨がない部分に骨盤から骨髄を移植することにより顔の変形を改善させるだけでなく、その部分に周りの歯を移動させる(歯科矯正)ことが可能となり、良好な噛み合わせを作ることが出来ます。
6)顔面形態の改善手術 高校生頃の成長が止まった時期から最終的な顔面形態の改善手術に入ります。これは顎切り手術ともよばれ、顔の骨を切断移動することにより健常者により近い顔に回復する事を目的に行われます。
7)咽頭弁手術 言語治療のみではどうしても改善できない重篤な言語障害の改善を目的に成長が完全に止まった後に施される手術で正常言語を獲得することが可能になります。

このように口唇口蓋裂は、顔の見た目の問題に始まり、哺乳、摂食、発音など多種多様な治療を長期に渡り必要とする疾患です。よって以前はこの症状はあっちの病院、その症状はこっちの病院と患者さんがあちこちを転々とすることが多かったようです。しかし患者さんにとって病院のかけ持ちほど大変なことはありません。よって最近首都圏には口唇口蓋裂センターなる施設も設立されてきています。青森県には未だこのようなセンターはありませんが、八戸市を始めとした周辺地域の患者さんが遠方の大病院まで行かなくてもいいよう、当科では手術はもちろんのこと、上記治療のほとんどに対応可能です。これも「優しくあたたかい病院」という当院理念の一つと考えております。詳細に関しては遠慮なく当科外来までお問い合わせ下さい。

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