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うみねこ通信 No.44 平成15年2月号

X線CTのおはなし

放射線科科部長  伊神 勲

皆様、「ビ-トルズ」をご存じでしょうか。そうです。あの1960年台に全世界を席巻した音楽史上に残る偉大なグル-プです。今尚多くのビ-トルズサウンドが街に流れ、去年には「ザ.ビ-トルズ1」というCDも世代を越えて発売されました。ところで、このビ-トルズのレコ-ドを製作・販売した英国の会社をご存じでしょうか。EMI(呼称:エミ)です。日本では東芝と提携し、東芝EMIが販売しています。勿論、全世界で爆発的にレコ-ドが売れたので、EMIは非常に儲かりました。あまりに儲かりすぎて、お金の使い道に困ってしまいましたが、そこは騎士道精神と紳士のお国柄です。莫大なお金を音楽と関係のない技術開発に投資しました。そして出来たのがX線CT装置です。

1972年、EMIの技師 Hounsfield と医師 Ambrose がCT(コンピュ-タ-断層の略)を発表しました。これは、X線発見以来の革命を放射線診断学にもたらしました。しかし、当初頭部CTを撮影するのに30分かかりました。まだ、コンピュ-タ-に真空管を使用していた時代です。現在は頭部全体を数秒で撮影できます。1979年、Hounsfield とCTの数学的基礎を築いた米国の Cormack にノ-ベル医学・生理学賞が授与されました。一企業の技術者がノ-ベル賞をもらうのは田中さんだけではなかったのです。因みに、昭和20年代日本でもX線による人体の回転横断撮影が弘前大学放射線医学教室で開発され、一世風靡しました。当時の放射線科教授の高橋信次先生にもノ-ベル賞をとの声も高かったのですが、果たされず後に文化勲章が授与されました。

X線CTの登場は、それまで伺い知れなかった人体内部を画像化する画期的なものでした。その後のコンピュ-タ-の進歩と共にCTも高速化されて、質の高い画像が提供されるようになりましたが、世の中はMRI(磁気共鳴断層撮影)の開発・発展に注目が集まり、CTの開発は沈滞し日陰者になりました。再びCTが画像診断に革命をもたらしたのは、片田和廣先生(現藤田保健衛生大学放射線医学教授)が1990年に発表したヘリカルCTです。従来CTは体の横断面(二次元)を主に撮影していましたが、ヘリカルCTはX線が体の周りを回転しながら頭→足方向に撮影し容積(三次元)デ-タを得ることが出来るようになりました。これにより、あたかも豆腐を掌上で縦、横、高さ、斜め方向に”サクッ、サクッ”と自由に切れるように、人体も撮影した領域で任意な(多方向)断面を得たり、立体画像が表示できるようになりました。そうです、時代は二次元から三次元へ移り、更に10年を経た21世紀では、時間の要素を加味された四次元の画像表示が可能となりました。最新のCT装置では、0.5mm厚以下で人体内部を縦横無尽に、心臓や腸管の動きも克服し、これらの鮮明な画像をも観察できるようになりました。

「必要は発明の母なり。」、「求めよ!さらば与えられん。」等と恒に夢を現実として手に入れてきた人類ですが、X線CTが今後どのように発展するか占ってみてください。去年は念願の新幹線が八戸までやってきました。今年は最新のCT装置が当労災病院にも導入されんことを夢見つつ、皆様方の放射線診断に携わって行きたい所存です。

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