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うみねこ通信 No.49 平成15年7月号

肺動脈血栓塞栓症について

心臓血管外科  大徳 和之

肺動脈血栓塞栓症を言うと、あまり聞きなれない病気ですが欧米では冠動脈疾患、脳血管疾患とならんで血管疾患として重要な地位を占めています。肺動脈は全身から集まった血液が心臓へ帰ってきて右心房、右心室を通り肺へ送られる管です。そこになんらかの原因で血液の塊がとんできて管、すなわち血液の通り道を詰まらせてしまう病気を肺動脈血栓塞栓症と言います。最近ではエコノミークラス症候群(この名称を変えようという方々もいるようですが。)として知られるようになった病気です。原因の多くは下肢・骨盤内の深部静脈にできた血液の塊です。これを深部静脈血栓症と言います。

深部静脈血栓症と肺動脈血栓塞栓症とは密接な関わりがありますので深部静脈血栓症からお話します。飛行機に長時間乗っていると下肢は九の字状になり特に膝下や太もも付近の静脈で血流のうっ滞が起こり、血の塊である血栓が作られます(ここまでが深部静脈血栓症です)。そして飛行機から降りる時、立ち上がった瞬間にその血栓がポーンと肺まで飛んで肺動脈を詰まらせ突然倒れる(これが肺動脈血栓塞栓症)。飛行機のエコノミークラスでこの現象が良く起こるというので名前がついていますが、何もエコノミークラスに限ったことではありません。

深部静脈に血栓を起こす原因としては主に3つの要因があると言われ、1.静脈壁の損傷。2.血流のうっ滞。3.血液凝固能亢進(こうしん)です。代表的なものとして1は手術後(どんな手術でも起こり得る可能性があります。)、骨折を含めた外傷。2は先ほど紹介した長時間同じ体勢で座る姿勢、長期臥床(寝たきり)、肥満、妊娠などです。3では悪性腫瘍、糖尿病、や血液疾患(血液が生まれつき固まりやすい)です。慢性化した(ある程度時間が経過した)深部静脈血栓症の場合、太ももから下がむくむ、あるいは腫れるといった症状が出てきます。この場合は血液を固まりにくくするお薬(俗にいう血液をサラサラにする薬)を飲んで治療することがほとんどです。すでに血液が固まってしまいできた血栓がぷかぷか浮いているような時には、血液の流れに乗って飛んでしまう可能性があるので血栓をつかまえるフィルターを大静脈に入れる必要があります。また突然に呼吸困難や冷や汗などの症状が出てきた場合には血栓がすでに肺動脈を詰まらせてしまった可能性が高く、早急な診断と治療が必要となります。

診断を確実に行うことはとても難しいのですが、胸部レントゲン写真、心電図、採血、超音波検査、CT(コンピューター断層撮影)や血管造影、シンチグラフィーなどで診断します。診断がついてから必要に応じて治療になりますが単純な薬物による治療から、カテーテルによる血栓吸引・溶解療法や場合によっては人工心肺を使って手術的に血栓を取り除くといったようにその重症度によって様々な治療方法があります。

いずれにせよ大切なことは病気を知るということです。病気を知るということは予防にもつながります。このような病気になりやすい人、例えば肥満や糖尿があると寝たきりになった時や長時間同じ体勢で座らなければならない時にはこのような病気になりやすいと言われており改善する必要があります。生まれつき血液が固まりやすいと言われている方は欠かさずに薬を内服することも大切です。

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