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うみねこ通信 No.61 平成16年7月号

動悸について

第一内科第2部長  小野寺 洋幸

『今日はどうされましたか?』
『先生、最近動悸がするんです。』

循環器内科を受診する患者さんの訴えとして、多いものの一つに“動悸”があります。一般に動悸とは「通常とは異なり、不快に感じる心臓の拍動感」と定義されます。「不快」に感じるため、病院を受診するのですが、その内容は「ドキンとする」「脈が飛ぶ」「ドキドキする」「動くと苦しくなる」「心臓の拍動感が気になる」など多種多様で、これら全てを患者さんは“動悸”として訴えます。多くの場合「心臓が悪いのでは?」と考えて循環器内科を受診しますが、その原因は不整脈などの心疾患、不安や緊張といった心理的な要因、タバコの吸いすぎや過労などの生活習慣に関わるものまで様々あります。実際に治療を要する病気は意外に少なく、そこで、より具体的な情報が必要になります。

『あなたの“動悸”とは、どんな感じですか?』
(1)『脈拍数は速いですか?遅いですか?』

脈拍数は安静時で1分間に60~100程度が正常とされ、100以上を「頻脈」、60以下を「徐脈」と言います。安静や労作時にかかわらず突然始まり、突然治まる頻脈には発作性上室性頻拍や発作性心房細動など、治療を要する疾患が含まれます。心臓病以外に貧血、発熱、甲状腺疾患、薬剤なども頻脈の原因となります。

しかし、全力疾走すれば脈拍は増加しますが、それはむしろ正常な反応です。「少し動いただけで脈が速くなる」「以前は歩けた距離が歩けなくなった」といった症状は何か病気が隠れている場合もありますが、その境界線は曖昧で体力的な要因も関わってきます。不安、緊張、興奮等の精神的要因によっても脈拍数は増加しますが、その多くは、徐々に速くなり、徐々に遅くなります。

(2)『脈は規則正しいですか?不規則ですか?』

人間の心臓は1日に約10万回の収縮を繰り返します。その中で何拍かは予測される時期(リズム)より速く心拍がでてくることがあり“期外収縮”という呼びます。「脈が飛ぶ」「ドキンとする」などの訴えの多くは期外収縮で、それ自体が治療対象となることは少ない不整脈です。以前は“不整脈は悪いもの”として多くの薬剤(抗不整脈薬)が投与されてきました。しかし最近では、不整脈が減って得られるメリットよりも、抗不整脈薬の副作用が問題とされ、薬剤の使用頻度は少なくなっています。ただし、血圧低下や意識消失を伴う不整脈や、心臓自体に疾患があり、その初期症状として不整脈がでているときには、治療を要する場合もあります。

(3)『どんなとき動悸がしますか?』

安静時には特に自覚症状はないものの、労作時に心臓の拍動を強く感じることがあります。これは、ポンプとしての心臓が、労作時の酸素消費量に見合った酸素を全身に送り出せない状態(心不全など)の可能性があります。心臓以外にも呼吸器疾患、貧血、甲状腺機能亢進症などもその原因として挙げられます。一方、「夜中になると心臓の音が気になる」「考え事をしているとドキドキする」などの症状は、心理的な要因が多く含まれます。重篤な疾患で“動悸”がするときには、心臓や肺に負担がかかる労作時に症状がでる場合が多いものです。

(4)『他にどのような症状がありますか?』

めまいや吐き気を伴うときには、徐脈や低血圧の可能性があります。胸痛や胸部圧迫感を伴うときは狭心症や心筋梗塞も疑われます。むくみや息切れを伴う場合も注意が必要です。

このように“動悸”と言っても内容は様々で、治療を要するものから不要なものまで多くの原因が考えられます。その詳細を聞くことにより、かなりの疾患が鑑別可能です。『これは普通じゃない動悸だな』と思ったときは、まずはかかりつけの医師に御相談下さい。

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