閉じる
HOME
診療科のご案内
当院のご紹介
ご来院の皆様
採用情報
診療科・各部門
各種ご案内


HOME ≫ 各種ご案内 ≫ 広報誌のご案内 ≫ うみねこ通信 ≫ バックナンバー ≫ 平成22年4月号

うみねこ通信 No.130 平成22年4月号

ふるえについて

神経内科部長  栗原 愛一郎

自分の意志に反して手足や体が勝手に動く事を不随意運動といい、ふるえも不随意運動の一つで医学用語では振戦といいます。慣れない乾杯の挨拶で緊張し、コップを持つ手がふるえ、ひどいと声までふるえた経験が有ると思います。また小説に怒りに体をわなわなふるわせるなどと書かれたりすることがありますが、興奮しても震えますし、また引っ越しなどで重いものを持った後一服する際にお茶を持つ手がふるえる事があります。これらはいずれも健康な人に起きるもので生理的振戦といいますが一過性で治療の必要はありません。これが病気で生じる場合があり神経内科で診ることになります。

代表的な病気としてはパーキンソン病がありますが、ふるえは安静時に出現する特徴があります。例えば箸を口元まで運ぶ際は全くふるえず、口元で止めると箸を持つ手がふるえ出す、つまり動作中にはでないが何もしないでいるとでてきます。片側の上下肢や下顎にでますが病気が進むと両側性になります。パーキンソン病についてはうみねこ通信で以前一度書いているので詳しくは述べませんが、初老の方に多く、ふるえの他に表情のない顔つきをし、やや前屈みで腕をあまり振らずに歩く、着替えなどの動作が鈍くなり時間がかかるなどの症状があります。パーキンソン病の治療薬がよく効く事が特徴で逆に効かない時は他の原因で似た状態になっている可能性が有り検査が追加されることがあります。

パーキンソン病以外に神経内科の外来でふるえを主訴とする病気としては本態性振戦があります。筆者は見ていませんが、NHKテレビのためしてガッテンでこの病気が取り上げられた様でそれをみて受診した方がいました。手を伸ばしたり物を持ったりした際に現れ、動作にともなう場合、一定の姿勢を保つ際にみられます。ふるえは両側性で上肢に多く、ふるえ以外の症状は認めません。程度も個人差が有り、日常生活に支障を来す場合はβ遮断薬という薬を使います。若い人にもみられますが高齢者に多く、頭部に出現する場合がありその格好からイヤイヤ振戦と表現されることがあります。アルコールを飲むと一時的に改善しますが、飲み過ぎるとアルコール中毒で震えの原因ともなり治療法にはなりません。

また神経内科の病気ではないのですが、たまにみられるものにバセドウ病という病気があります。首の前の方にある甲状腺という器官からホルモンが出すぎる病気で、若い女性に多く、両側の手指のふるえ以外に前頚部のはれ、多汗、動悸、いらいら感、眼球突出(目立たない場合でも目がばっちりした人が多い)、食べても食べても太らないなど甲状腺が機能亢進の状態になります。当院では糖尿病内分泌内科に紹介し治療してもらいますが甲状腺機能が正常になるとふるえは消失します。

ふるえを呈する病気は頻度は少ないですが他にもいろいろありますし、精神科や喘息の薬の一部で副作用としてふるえが出現したり、総合病院では普通にみられる肝不全や透析患者で振戦とまぎらわしい不随意運動が出現する場合もあります。治療法がそれぞれ異なるのでまずは正しく診断することが大事になります。ふるえが続き困るような場合は一度神経内科を受診することをお勧めします。

このページの先頭へ