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うみねこ通信 No.157 平成24年7月号

IVRと放射線治療
―カテーテル治療最前戦と、切らずに治す!がん治療―

放射線科医師  德田 俊英

こんにちは。放射線科っていったいどんな仕事をしているのでしょうか?多くの方には、レントゲンを撮る人というイメージがあるようです。でも、違います。私たちの仕事はレントゲンを撮ることではなく、大きく分けて、①画像診断、②IVR(アイ・ブイ・アール)、③放射線治療、の3つがあります。
 まず、②のIVRという言葉、馴染みがない言葉だと思います。適当な日本語訳がないため、Interventional Radiologyという英語がそのまま用いられており、日本では"IVR"と略称されています。"画像支援治療"あるいは、血管系のIVR手技が"血管内手術"、"カテーテル治療"などと呼ばれることもあります。
 IVR手技を用いた治療法は、血管系に対するIVRと非血管系分野のIVRに大別されます。br
 血管系IVRに含まれる内容には、血管性病変に対するIVR(血管狭窄あるいは閉塞に対する血管形成、動脈瘤や動静脈奇形の塞栓、さまざまな出血に対する血管塞栓による止血、大動脈瘤に対するステント・グラフト留置など)や、悪性腫瘍に対するIVR(腫瘍を栄養する動脈への動注化学療法あるいは動脈化学塞栓療法など)があります。
 腫瘍に対する動脈塞栓術は、子宮筋腫や腎血管筋脂肪種といった良性の腫瘍にも応用されています。
 またこのほかにも局所動注化学療法のためのリザーバー・カテーテルシステムの留置や、脾機能亢進症に対する部分的脾塞栓術、肺塞栓防止のための下大動脈フィルター挿入なども血管系IVRに含まれます。
 非血管系IVRに含まれる内容も多岐にわたりますが、血管以外の管腔臓器(当院では主に胆道)の狭窄や閉塞に対する治療や体腔内液体貯留(胸水、腹水、膿瘍など)に対するドレナージ、などが含まれます。
 また悪性腫瘍に対する治療法として、経皮的直達治療(経皮的腫瘍内エタノール注入、ラジオ波を用いた焼灼療法、最近では凍結療法)があります。
 以上のことをまとめると、IVRはカテーテルという細い管や、針を使ってがん治療したり、血管を治したり、痛みを和らげたり、出血を止めたり、体が黄色くなってしまったのを治したりと多彩な仕事をしています。放射線科IVR医は病院の縁の下の力持ちといった存在なのです。
 ③の放射線治療は聞いたことがある人が多いと思います。まさに、がん治療に特化した仕事です。放射線は手術、抗がん剤とともにがんの治療の中で重要な役割を果たしています。放射線は手術と同じく、がんとその周辺のみを治療する局所治療です。手術と異なるところは、臓器を摘出せずに温存することができるというところです。放射線が、がん治療の手段として使われはじめてから100年以上がたちますが、特に最近では放射線治療機器、放射線生物学やコンピューターが発達し、放射線治療は急速に進歩してきました。
 放射線治療はがん治療において、手術と並んで根治(完全に治ること)が目指せる治療法です。がんの種類により異なりますが、従来より頭頚部(口やのど)がんでは臓器の温存が可能であることから放射線治療の役割が大きく、また、手術可能な前立腺がんや子宮頸がんでは手術と効果は同等(実際、欧米では多くの患者さんは手術を選択されません)と示されており、しかも外来通院で治療が可能です。早期肺癌に対しても局所制御において手術と同等とされるようになってきました。乳癌手術で乳房温存した場合には、原則術後照射を行うことになっています。最近では体幹部定位放射線治療や強度変調放射線治療など、いわゆる「ピンポイント照射法」が次々と開発されています。根治が難しい方に対しても、症状緩和としての放射線治療の役割も大きく、がん患者さんのうちほとんどが放射線治療の適応になるといっても過言ではありません。しかしながら、欧米ではがん患者さんのうち6割以上が放射線治療を受けているのに対し、日本では約25%程度であり、放射線治療に対する認知度は医療関係者の中においてさえもまだまだ低いといえます。
もし、がんと関わることがあれば、放射線治療の可能性を検討してみて下さい。
放射線科の仕事は、とても多彩で、ただ長い文章になってしまいましたが、最後まで読んで頂いてありがとうございました。

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