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うみねこ通信 No.199 平成28年1月号

先天性色覚異常について

眼科部長 木村 百子

平成14年に文部省の学校保健施行規則が改正されたことにより、その後の平成15年から、それまで小学4年生全員に施行していた色覚検査が必須ではなくなり、ほとんどの学校で検査が行われなくなりました。

その結果、自分の色覚に関する情報を得る機会がないまま進学、就職先を選び、適性検査時に初めて色覚異常を指摘され不利益を受ける事例が多数見受けられました。このような事態を受け、平成26年からは学校で希望者に色覚検査を行うようになりました。

1)色覚異常とは

色覚とは色を見分ける能力です。目に入る情報は赤、緑、青の基本となる光の3色の組み合わせでできています。網膜にはこの3色に対応する3種類の視細胞(赤錐体、緑錐体、青錐体)があり、この錐体のいずれかの機能の一部に異常があるものを色弱、現在は異常3色覚(1型3色覚、2型3色覚)と呼んでいます。また3種類の錐体のうち一つが欠損しているものは以前は色盲と呼ばれていましたが、現在は2色覚(1型2色覚、2型2色覚)と分類されています。赤錐体、緑錐体異常の他に青錐体の機能欠如による3型色覚もありますが、非常にまれです。

上記の1型2型色覚異常は日本人男性の約5%(20人に1人)女性の0.2%(500人に1人)に認められ、男性に多いのはその遺伝形式によるものです。この錐体の機能を決定する遺伝子は男女の性別を決定する染色体(XとY)のうちX染色体にあり、劣性遺伝します。つまりXが一つしかない男性はそのXが色覚異常遺伝子を持っていると色覚異常として生まれ、女性の場合は2個のXの両方が色覚異常の遺伝子を持っている場合のみ色覚異常になります。1個のXが色覚異常の遺伝子を持っている女性は色覚正常の保因者となります。

このように生まれつきの網膜の色を感じる細胞の機能の違いなので、成長過程での病気、栄養などは関係ありませんし、成長とともに治ることも悪化することもありません。色覚異常は治るなどの広告は嘘ですので騙されないようにしてください。

2)色覚異常を指摘されたら

病院では、色覚異常のタイプと程度が判りますが治療法はありません。学校での指摘が納得できない、タイプを知りたい、程度によって就学、就職の基準が異なるという場合は受診したほうがいいでしょう。

1型は赤の色の区別が難しく、2型は緑の色の区別が難しいという傾向があり、赤の区別が難しい場合、車のテールランプが判りずらかったり、肉の鮮度、焼き色が判別しずらいなどの不都合があるようですので、日常生活の中で親が一緒に見て、注意が必要な場面を教えるなど、赤の危険信号など分かりずらい物を自覚させることが望まれます。

3)就学、就職に関して

近年は就学、あるいは採用時に色覚検査が必要な機関は少なくなってきていますが、依然として鉄道運転士、小型船舶操縦士、海技士、機関部船員、航空機乗務員、航空管制官、警察官、消防士、自衛官などは色覚に関する基準が設けられています。

その他広告印刷業、映像関係、電気工事士、塗装業、食品の鮮度を判別する仕事などでは色覚の制限はなくても、実際には仕事に支障がある、採用試験時に色覚検査を施行された、などの報告があります。

進路選択の際は希望する学校、職業の情報を集めて、将来不利益を蒙らないように調べる必要があります。

「色覚問題研究グループぱすてる」という団体が色覚異常に関する色々な情報を提供しています。

 

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