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うみねこ通信 No.201 平成28年3月号

糖尿病と歯周病の怖い関係

第二糖尿病・内分泌内科部長 川原 昌之

近年「メタボ健診」などにより、生活習慣病の予防に対する関心が高まっています。その中でも糖尿病は他の病気との関連が示されている点からも注目されています。最近の調査(厚生労働省2014年国民健康・栄養調査) では、糖尿病とその予備軍を合わせると約2050万人(日本人の6人に1人)と推計されています。糖尿病は放置していると体の血管や神経に影響を及ぼしてさまざまな合併症を引き起こす病気で、進行すると心臓病、腎臓病、脳卒中、失明などにより生活の質(QOL)や生命にも影響を及ぼしてしまいます。さらに歯周病も深く関連する病気であるということがわかり、「糖尿病の第6の合併症」といわれるようになりました。

糖尿病で高血糖状態が続くと免疫機能(体の中の防御機構)が低下して感染症にかかりやすくなるといわれています。細菌感染を原因とする歯周病においても同様であり、糖尿病の人は健康な人に比べて歯周病にかかっている確率が2.6倍も高まるといわれています。しかも、高血糖のため炎症が悪化しやすい状態になっていることから、歯周病が進行し重症化しやすくなります。さらに近年では、歯周病の存在が糖尿病の状態に影響する可能性があるとの報告がされるようになってきました。歯垢(プラーク)に含まれる歯周病菌が持つ毒素や、歯周病にかかった歯茎の中で作り出される炎症性物質が、血液を介して体の離れたところに作用することで血糖値を高くするような悪影響を及ぼし、ひいては動脈硬化を進める原因になってしまうと考えられているのです。また、歯周病にかかっている糖尿病の人は、糖尿病の合併症である心臓病で死亡する確率が2.7倍、腎臓病で死亡する確率が4.1倍も高くなることが報告されています。実際に歯周病の治療をすると、血糖コントロールの指標であるヘモグロビンA1cの値が改善することも報告されています。

歯周病が進行すると毎日の食事に影響がでてきます。歯周病は初期の段階では歯茎の多少の腫れや歯茎からの出血がみられるだけですが、進行すると歯茎がひどく腫れたり、歯を支える骨が溶けて歯がグラグラし始めたりするようになります。そうなるとうまく噛めなかったり、噛むと痛みが生じたりして食事に支障をきたすようになります。さらに進行して歯が1本、2本と抜けてなくなってしまうと、噛む力はずいぶん低下してしまい、入れ歯を入れたとしても、自分の歯で噛む場合に比べると、噛む力は4分の1から6分の1程度になってしまうといわれています。噛めなくなるということは、食事により影響を受ける糖尿病の方には重要な問題となります。噛むことに支障が出てくると軟らかい食べ物を好むようになったり、あまり噛まずに飲み込んで早食いの傾向になってしまうようです。軟らかい食べ物は一般的に糖質や脂質を多量に含む(高カロリー)ものが多く、また噛まないと満腹感が得られにくくなるため食事量が増えてしまい、結果的に肥満に陥りやすくなります。また、噛まないことで唾液の量が減ってしまい、唾液による抗菌作用が減弱して、口の中の細菌が増えることにもつながります。したがって十分に噛めない状態は、歯周病を悪化させるだけでなく、早食い、食べ過ぎ、糖質や脂質の多い食事などによって糖尿病を悪化させる原因にもなります。

以上のように、糖尿病と歯周病は相互に悪影響を及ぼす「怖い関係」にあることから、糖尿病がある場合は同時に歯周病もケアしていくことが重要です。つまりは、生活習慣病を予防したり、全身の健康を保つためには、体と同様に口の中の健康チェックも定期的に行うことが大切です。あなたのお口の中は大丈夫ですか?

 

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