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うみねこ通信 No.275 令和4年5月号

子宮頸がんワクチン

放射線診断科 伊神 勲

2028年、オーストラリアでは子宮頸がんワクチン接種と検診で、子宮頸がんが激減すると、昨年10月に医学雑誌に発表されました。先進国の中でも子宮頸がんを克服する最初の国となるようです。オーストラリアでは、2007年からHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン接種を積極的に取り組んできており、10代女子は学校で無料接種を受けることができました。さらに2013年からは、学齢期の男子にも接種を開始しました。子宮頸がんの原因となるHPV感染は性的接触(初性交で70-80%感染)で広がるため、男子にも接種することで効果的に感染を抑え込むことができました。
日本でも2010年からHPVワクチンを公費で受けられる定期接種が始まり、接種率は70%以上となりました。しかし、複数の副反応を受けて、厚労省が2013年6月に積極的推奨をやめ、接種率が1%以下となりました。1980年代の薬害エイズ事件やMMRワクチン接種訴訟などで、厚労省はマスコミをはじめとした国民からの猛批判を受けました。そのトラウマのためか、HPVワクチン接種の副反応がマスコミに囃し立てられるや否や、すぐに推奨をやめました。その間世界では、「ワクチン接種と報告されている副反応に関連性はない」が常識とされ、欧米先進国ではワクチン接種が進んでいました。日本では現名古屋市長が、ワクチン接種の副反応を証明しようと、非常に大規模となる7万人以上の若年女子からアンケート調査を行い、詳細に検討しました。その結果、2015年12月14日にワクチンと副反応に関連性は認められないと報告されました。一時、名古屋市のHPに掲示されましたが、1か月で削除され、マスコミも一切報道しませんでした。
2022年4月1日からHPVワクチン接種の積極的勧奨が9年ぶりに再開されます。日本では、子宮頸がんにより年間約2900人が命を落とし、約1万人の子宮が傷つけられています。科学的根拠のないマスコミをはじめとした批判により、救われるべき多くの命があったと思われます。
HPVは150種類以上あり、そのうち13種類以上に発がん性があることがわかっています。発がん性のあるHPV感染は、陰茎がん、膣がん、外陰がん、肛門がん、中咽頭がんに関与します。また、HPVには性器・陰部にいぼが発症する尖圭コンジローマの原因となる弱毒ウイルスもあります。尖圭コンジローマも性行為感染症であり、20歳代男女での感染が最多である病気です。欧米諸国では、尖圭コンジローマの原因ウイルスを含む4価と9価ワクチン接種により、尖圭コンジローマの発症が激減しています。尚、子宮頸がん予防効果は、2価と4価ワクチンで約70%程度、9価ワクチンで約90%といわれています。日本でも早く9価ワクチンによる無料の定期接種が、現行無料定期接種の対象はである小学6年生から高校1年生の男女が共に接種を受けられることが望まれます。また、20歳代の若年発症が増えている子宮頸がんです。対象期間に接種を受けられなかった女性は、2年に一度は検診を受けることががんの早期発見に重要です。
 

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