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うみねこ通信 No.278 令和4年8月号

身の回りの放射線について

中央放射線部 竹内 満美子

平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(マグニチュード9)によって東京電力(株)福島第一原子力発電所で事故が起こり、放射性物質(ヨウ素、セシウムなど)が大気中や海中に放出されました。この発電所の周辺地域では、放射線を受ける量が一定の水準を超える恐れがある方々が避難することとなり、東日本の一部の地域では、水道水の摂取や一部の食品の摂取・出荷が制限されました。このようなことから皆さんの中にも、放射線への関心や放射線による人体への影響などについての不安を抱いている人が多いと思います。そこで自然界の放射線についてお話しします。
①宇宙から
宇宙は、今からおよそ137億年前のビッグバンによって生まれたと考えられています。私たちの住む地球は、そのビッグバンから90億年ほど経った46億年ほど前に誕生しました。この宇宙には、誕生時からたくさんの放射線が存在し、今でも常に地球に降り注いでおり、これを宇宙線といいます。宇宙線は、地上からの高度が高いほど多く受けます。例えば、標高の高い山では、平地と比べて大気中の空気が薄くなるため、宇宙線を遮るものが少なくなり、平地よりも多く受けます。
②大地から
46億年ほど前に誕生した地球の大地にも放射性物質が含まれており、こうした環境の中で全ての生き物が生まれ、進化してきました。大地では、岩石の中などに放射線を出すもの(放射性物質)が含まれています。放射線の量は、岩石に含まれる放射性物質の量によって変わります。例えば、イランのラムサールやインドのケララ、チェンナイ(旧マドラス)といった地域では、世界平均の倍以上の放射線が大地から出ています。日本でも関東地方と関西地方を比べると、関西地方の方が年間で2~3割ほど自然放射線の量が高くなっています。このような地域差があるのは、関西地方は大地に放射性物質を比較的多く含む花こう岩が多く存在しているからです。
③空気から
空気には、主にラドン(岩石から微量に放出される希ガス)という放射性物質が含まれており、ラドンは世界中の大地から出ています。また、石やコンクリートの壁からも出ているため、石造りの家が多いヨーロッパでは、寒冷なことから窓を閉めることが多く、日本に比べ室内のラドンの濃度が高くなっているといわれています。
④食べ物から
食べ物には、主にカリウム40という放射性物質が含まれており、自然界にあるカリウムのうち0.012%がカリウム40です。カリウムは、植物の三大栄養素の一つといわれ、私たちは野菜などを食べることで体内にカリウムを取り込んでいます。そのカリウムは人間の体にも欠かせない栄養素であり、体重の約0.2%含まれています。

医療機関で用いられる放射線検査は、放射線の知識を持った有資格者が人体への影響やリスクを考え、有益な医学的情報が得られる範囲内で線量をできるだけ小さくするように撮影条件などの最適化を行っているため、心配することなく受けることができます。その他にも空港の手荷物チェックやタイヤの性能強化など、身近なところで役立っています。また放射線によって、仏像の中内部に金属製の内臓が納められているのが確認されたという歴史的発見もされました。
このように人類は、放射線が存在する中で生まれ進化してきました。私たちは日常生活でも放射線を受け、利用しています。地球で暮らす上では仕方ないことであり、それでも人間にとって不可欠な存在です。私たちの日常生活において必要以上の放射線による影響を避けるために、正しく理解し安全に使用していくという事が大切となってきます。

右のエックス線画像の重ねた手の上方に内臓が見える。(九州国立博物館)
    
 

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